きとにゃんのおもちゃばこ。

やとわれたんていです。

佐藤尚之(2008)『明日の広告』

電通でクリエイティブを担当されていた佐藤尚之(さとなお)さんによる、2008年に出版された広告 ・コミュニケーション論。
『明日の◯◯』シリーズの第一弾で、広告・マーケティング業界では現代の古典らしい。

 

明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法 (アスキー新書 045)
 

   

あらすじ

インターネットの普及、情報洪水、市場の成熟などによって、消費者はガラリと変わってしまった。マスメディアへの接触が減り、広告をスルーし、しかも信じない。友人からのクチコミの方がずっと信頼される。どうしよう…。でも不安に陥ることはない。悲観することもない。ちょっと発想を転換してコミュニケーションの仕方を変えれば、広告にもマスメディアにも、明るい「明日」が待っている。そろそろそんなポジティブな話もしようじゃないか。 

 

ネットの出現と「変化した消費者」

時代背景:ネットの出現+情報洪水+成熟市場(p67-71)
  1. ネットの出現
    ネットは商品の真の姿を映し出す「ラーの鏡」だ!(p67)

  2. 情報洪水
    人が処理できる情報量は変化していないのに、世の中に流れている情報量は(94~04年で)410倍に。
    消費者にとって9割9分の情報は処理できない。

  3. 成熟市場
    商品の品質での差別化が難しくなった。性能には大きな差が無い。

広告からみる「変化した消費者」(p28-30)
  1. ラブレターが相手の手に届きにくくなった。
    →4マスに広告を売てば見てくれる、の時代ではない。
     消費者の行動を観察し、あらゆるタイミングと場所でアプローチする必要がある

  2. 他に楽しいことが山とあり、相手はラブレター自体に興味をなくしている。
    →情報洪水の時代。消費者はいらない情報をスルーするように。
     無数の情報とエンターテイメントに囲まれて、広告はスルーされてしまう。

  3. ラブレターを読んでくれたとしても、口説き文句を信じてくれなくなった
    →ネットの出現により、消費者同士で情報交換するように。
     メーカーの論理や商品の裏側を知り尽くす「疑り深い消費者」に。

  4. しかもラブレターを友達と子細に検討し、友達に判断を任せたりする。
    →ネットでヨコに繋がった消費者たちによって、商品が解剖される「商品丸裸時代」。
    そのうえ、広告を疑う消費者も、使った人や友達の生の声は深く信じる。

 

「変化した消費者」のための広告とは?

変化した消費者に合わせて、自分自身を変えていく
→「コミュニケーションデザイン」の必要性。
 消費者を出発点に、コミュニケーション全体を設計する。
商品開発からすでに消費者とのコミュニケーションは始まっている。「変化した消費者」を相手にする時、商品開発コンセプトという最上流に「全体のコミュニケーションをデザインできる人」を置くことが、これからの時代には必要になってくると思われる。(p49-50) 
消費者を徹底的に分析することの意義(p128)

→いわゆるマーケティングリサーチ的なものの重要性が高まる?

  • 従来の調査:「その商品のメインターゲット(商品を買わせたいターゲット層)を決め、そのターゲット層の行動を調査する
  • 消費者本位の分析:「この商品群を買いたがっている人」を調査。年齢層では分からない購入意向者像が見える。 
消費者分析と広告は何が違うか?
消費者の行動を分析し、メディアをニュートラルに選んで消費者とコミュニケーションをするだけでは、「スマートでそつのない給仕」である。それだけでは素晴らしいサービスだがそれ以上の効果はなく、単なるインフォメーションにすぎない。相手の心を動かすための広告には、やはりクリエイティブが重要になる。(p172-173) 
 

きとにゃん’s めも

  • AIDMAからAISASへの変化。
    「ただし、何にでもAISASを当てはめる人がいるが、それは間違いだ」(p106-108)
    →老人や子どもは検索も共有もしない(AIDMA的)。
     コンビニやドラッグストアで3秒で選ぶような商品はあまり検索されない。
  • 素人の動画コンテンツが持つ広告効果として、youtuber的な存在の可能性を予見(p77-81) 
  • テレビの口コミ効果(=お茶の間)の消滅と、お茶の間の口コミ効果をネットが代替すること(=ネオ茶の間)による、テレビの復活。(p193-203)
    ニコニコ動画的なコメント共有や、リアルタイムでの「ツッコミ」を活かした、ネットと共存することを前提としたコンテンツ作り。
    →けれども、実際にはどこまでうまくいっているのだろう?
     テレビの側のコンテンツを肴にネットで交流するという形態はあまり取られず、ネット上の流行コンテンツがテレビに取り上げられることが2017年現在多いような。テレビの持っている質の高い映像コンテンツ作成能力が活かされていない?

  

章立て

  • はじめに
    「なんだか小難しい時代になっちゃったな」とお嘆きの貴兄に

  • 第1章:消費者へのラブレターの渡し方
    広告という名の「口説き」の構造

  • 第2章:広告はこんなにモテなくなった
    変化した消費者と広告の20年

  • 第3章:変化した消費者を待ち伏せる7つの方法
    彼らと偶然を装って出会うために

  • 第4章:消費者をもっともっとよく見る
    コミュニケーション・デザインの初動

  • 第5章:とことん消費者本位に考える
    スラムダンク一億冊感謝キャンペーンより

  • 第6章:クリエイティブの重要性
    商品丸裸時代とネオ茶の間の出現

  • 第7章:すべては消費者のために
    消費者本位なチームづくり

  • おしまいに
    楽しくエキサイティングな時代なのだ