きとのおもちゃばこ。

名刺の肩書が『データアナリスト』になったけど、実態が無いので途方に暮れてます。

【読んだ本】行動経済学の逆襲(2016)

 2017年にノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラーによる、
自伝が半分、半分が行動経済学の成立過程を描いた本。

行動経済学といえば、2002年に同じくノーベル経済学賞を受賞した
ダニエル・カーネマンファスト&スローが有名である。

セイラーは、カーネマン・トヴェルスキーから心理学の視点を学び、
経済学としての「行動経済学」領域を切り開いた。

行動経済学の逆襲

行動経済学の逆襲

 

 

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  • 行動経済学とは、「経済の主体は非合理的な判断をする”human”である」という
    (心理学では当たり前の)前提から出発した経済学の領域である。
    従来の経済学は、常に合理的な判断をする”Economic man”を念頭に置いた、理論先行の学問だった。
  • 行動経済学(または類する領域)の視点で重要なのは、
    (1)事実を観察すること、(2)データに基づくこと、(3)意見を主張すること
  • ナッジとは、人々に進んでその行動を取らせるよう誘導する(行動経済学的な)仕掛け。
    保険の加入率向上など、実際の政策にも応用されている。
本書のもくじ
  • 第1部 エコンの経済学に疑問を抱く 1970~78年
  • 第2部 メンタル・アカウンティングで行動を読み解く 1979~85年
  • 第3部 セルフコントロール問題に取り組む 1975~88年
  • 第4部 カーネマンの研究室に入り浸る 1984~85年
  • 第5部 経済学者と闘う 1986~94年
  • 第6部 効率的市場仮説に抗う 1983~2003年
  • 第7部 シカゴ大学に赴任する 1995年~現在
  • 第8部 意思決定をナッジする 2004年~現在
感想とか
  • セイラーは、従来な合理的な経済学理論では説明できない、
    (非合理的な)経済行動を特集した雑誌連載がきっかけで注目を浴びている。
    データドリブンでの理論構築を目指す点に、行動科学の発想を感じる。
  • カーネマンもトヴェルスキーも「心理学者」として描かれており、
    経済学からスタートした行動『経済学』者であることに、セイラーの特徴があった。
    セイラーの研究人生では、心理学の知見をうまく取り入れることで研究が進展していた。
  • ナッジ=人々に進んでその行動を取らせるよう誘導する(行動経済学的な)仕掛けだと理解した際、
    真っ先にD・ノーマン『誰のためのデザイン?』の話が頭をよぎった。
    …と思ったら数ページ後にまさにノーマンから発想を得ていた話が出てきて興味深い。
    セイラーは、カーネマン・トヴェルスキー以外にも数多くの心理学者の影響を受けている。
  • というか、”nadge”の日本語訳が『実践 行動経済学』ってタイトルなの、
    原題のメッセージ性をあまりに削いでて格好悪くないですかね…
  • ダニエル・カーネマンの妻がアン・トリーズマンだったのには驚いた。
    トリーズマンと特徴統合理論は、認知心理学の教科書では必ず登場するトピック。
    「イチゴの中にミカンが混ざってたらすぐに分かるよね」の研究をしてた人。
こんな人におすすめ
  • 科学者の伝記や、『フェルマーの最終定理』のような話が好きな人
  • 話題の行動経済学を学んで教養を身に着けたいとか、
    自分のビジネスに行動経済学を活かしたいなどの気概に欠けているタイプの人。
  • 大学で経済学または心理学を齧ったことがある人