きとのおもちゃばこ。

名刺の肩書が『データアナリスト』になったけど、実態が無いので途方に暮れてます。

【読んだ本】ブランディングの科学(2018)

マーケティング界隈では、P&G出身者が猛威を奮っている。
P&G出身のマーケターを指して、「P&Gマフィア」と呼ばれることさえある。

そんなP&G流マーケティングの根底にある理論の一つが、
バイロン・シャープという人物、ならびにアレンバーグ・バス研究所の研究成果にあるらしい。

 

そんなバイロン・シャープによる著書がこの度邦訳された*1

ブランディングの科学 誰も知らないマーケティングの法則11

ブランディングの科学 誰も知らないマーケティングの法則11

 

本書の主張を1行でまとめてしまえば
コトラーのばーかばーか、STPのばーかばーか」になるだろう。

コトラーに対抗して本書で掲げているのが、「洗練されたマスマーケティング」である。 

 

3行でまとめてみる
  • 認知率が高いブランドは、そうでないブランドに比べて、
    マーケットシェアだけでなく、購入頻度などのロイヤルティ指標も高水準にある。
  • ブランド間での顧客基盤はある程度共通しており、
    カテゴリ間の違いに比べると、ブランド間での違いは微々たるものである。
  • ブランドの価値は市場の消費者との関係性に起因しており、
    ①カテゴリ内で真っ先に想起され、②商品がすぐに買える状況にあるとき、ブランド価値が高い。
本書のもくじ
  • 第1章 :エビデンスに基づいたマーケティング
  • 第2章 :ブランドはどのように成長するか
  • 第3章 :顧客基盤を拡大させる
  • 第4章 :ブランドにとって最も重要な顧客を探す
  • 第5章 :顧客のパーソナリティプロファイルを知る
  • 第6章 :真の強豪ブランドを探す
  • 第7章 :消費者のコミットメントを知る
  • 第8章 :差別化か、それとも独自性か
  • 第9章 :広告の機能
  • 第10章:価格販促の役割
  • 第11章:ロイヤルティプログラムが成功する理由
  • 第12章:メンタル・アベイラビリティとフィジカル・アベイラビリティ
  • 第13章:究極の世界
従来の理論とシャープの主張の比較

序章(p.14)で挙げられた従来の「マーケティングの仮説」に対応する、
シャープの主張は以下の通りだと考えられる*2

  1. ブランドの差別化を図ることは、マーケティングの重要な仕事である。
     →論理的に比較することで見つかる差別化ポイントを探すより、
      消費者から自動的に想起されるような独自性を磨くべき。
  2. ロイヤルティを測定することで、ブランドの強さが分かる。
      →測定されたロイヤルティ指標は、ブランドの規模と比例している。
  3. 新規顧客を開拓するよりも、既存顧客を維持するほうが安い。
     →どんなブランドも一定の離反者は避けられない。
      それより、新規者を増やす余地の方が遥かに大きい。
  4. 価格販促は市場浸透率を押し上げるが、ロイヤルティには影響しない。
     →価格販促で購入するのは購入経験のあるユーザーが多い。
      新規者は増えないので、市場浸透率は上がらない。
  5. どのブランドを相手にして戦うかは、ブランドイメージのポジショニング次第。
     →ブランドイメージの測定結果が多少離れていようと、
      多くのブランド間で、購買顧客はだいたい重複している。
  6. 競合上の優位性を発揮することはもはや不可能。
     →購買顧客が重複しているので、市場は細分化していないと考えるべき。
      同一市場で全ての強豪を相手にする、マスマーケティング的な戦い方で良い。
  7. 消費者が自分の担当するブランドを選ぶには、それなりの理由がある。
     →大した理由がないまま購買されていることも多々ある。
      また、ブランドA購入者がブランドAを選んだ理由と、
      ブランドB購入者がブランドBを選んだ理由は大体同じである。
  8. 自分が担当するブランドを選ぶ人はユニークな存在である。
     →ブランドAの購入者属性と、ブランドBの購入者属性はほとんど一致する。
      ブランド購入者の特徴は、そのほとんどをカテゴリ購入で説明可能で、
      ブランドに固有の購入者属性の特徴はほとんどみられない。
  9. 売上の80%以上が、最も購入頻度の高い顧客の20%からもたらされている。
     →上位20%の顧客によって、売上の60%がもたらされている。
      一般的なパレートの法則(80:20)ほど極端ではない。
感想とか
  • 普段の業務で目にするデータ傾向が、見事なまでに言語化されていて驚愕した。
    例:購買者が共通しているブランドほど、同一市場にあるとみなせる
      ライバル関係のブランドも購買者は重複しており、属性にも差がない
      ロイヤルティ施策で市場規模を確保できているブランドは少数
      大規模ブランドはライトユーザー基盤で、小規模ブランドはカテゴリヘビー基盤 etc...
  • 一方で、普段の業務では上記のようなデータ傾向を見てもなお、
    コトラー的な発想でデータの解釈〜マーケティング戦略策定を行っていた。
    コトラー的な発想のマーケティング戦略に対して、
    「データを出発点に理論(戦略)を組み立てよう」が、本書の立場だと理解している。
  • とはいえ、私自身の業務に関して言えば、
    クライアント企業のマーケ担当もコトラー的な発想が中心であるため、
    ここのギャップをなかなか埋められる気がしない。
  • 『確率思考の戦略論』著者でUSJマーケ担当の森岡毅も、元P&Gマーケ担当者。
    同書でも、シャープやアレンバーグ・バス研究所の仕事が随所に引用されている模様*3
  • 本書『ブランディングの科学』や、先述の『確率思考の戦略論』にて、
    購買行動のモデル化に使われている、NBDディリクレへの理解を深めたくなった。
    どうやら、NBD-dirichletのためのRパッケージもあるらしい。

    rdrr.io

こんな人におすすめ
おまけ

訳者HPによると、本書には続編があるらしい。
こちらの翻訳も今から待ち遠しい。

www.igaku-honyaku.jp

 

 

*1:当然、訳者も元P&Gのマーケターである。

*2:ブログ著者による見解

*3:詳細は未読。目次と参考文献を確認した程度だが、『ブランディングの科学』をより小難しく書いた本という印象を受けた。