きとのおもちゃばこ。

名刺の肩書が『データアナリスト』になったけど、実態が無いので途方に暮れてます。

【読んだ本】残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか?(2018)

1年半の社会人生活で不満に思っていることは、
「業務量(≒残業)の多さ」「給与の低さ」「スキル獲得の機会の無さ」である。

おかげさまで、「働き方改革」には人一倍敏感になってしまった。

そんな中、人材開発・組織開発で有名な立教大学・中原淳さんが
『残業』をテーマに本を執筆されたと聞いて、気になって読んでみた。

残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか? (光文社新書)

残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか? (光文社新書)

 

本書は、中原研究室・パーソル総合研究所が実施した、
総計2万人以上を対象にした学術調査データの結果をもとに執筆されている。

分析内容の一部は、パーソル総合研究所の一部でも公開されている。

rc.persol-group.co.jp

 

3行でまとめてみる
  • 「残業」のデメリットは何なのか?
     →長時間労働による健康リスクもさることながら、
      長期キャリアに必要なスキルを身につける時間が削られるリスクも大きい。
  • 残業が起こってしまうメカニズムは?
     →残業は限られたメンバーに「集中」して生じ、
      職場内の同調圧力により他メンバーへ「感染」する。
      また、残業することが組織文化として下の世代に「遺伝」する。
  • 残業をいかに改善することができるのか?
     →残業削減の施策は、その分の「残業代還元」がなければ不利益変更になる。
      それと同時に、組織風土やマネジメントの改革も必要。
本書のもくじ
  • オリエンテーション ようこそ!「残業学」講義へ
  • 第1講   残業のメリットを貪りつくした日本社会
  • 第2講   あなたの業界の「残業の実態」が見えてくる
  • 第3講   残業麻痺――残業に「幸福」を感じる人たち
  • 第4講   残業は、「集中」し、「感染」し、「遺伝」する
  • 第5講   「残業代」がゼロでも生活できますか?
  • 第6講   働き方改革は、なぜ「効かない」のか?
  • 第7講   鍵は、「見える化」と「残業代還元」
  • 第8講   組織の生産性を根本から高める
  • 最終講   働くあなたの人生に「希望」を  
  • おわりに 
感想とか
  • 「残業のリスク」として、学習機会の損失が挙がっている点が印象的。
    自分の業務を振り返っても、下記の点には容易に思い至る。
     1)ストレッチした業務に取り組む機会/取り組み後の振り返りの余裕が無い
     2)より高度な業務に必要なスキルも、業務内で学習機会を設けられない
     3)残業が多いため、業務外さえ学習機会を設けることが困難
  • 個人的には「業務に必要なスキルを、業務外で身につける」風潮が意味不明なので、
    学習機会の損失が起こっている会社では、仮に残業がゼロになったとしても、
    学習機会の損失は変わらず起こり続けるのでは、という懸念がある。
  • 「家庭で過ごす時間が奪われる」も重大な残業リスクだと思うのだが、言及はない。
    育児や介護にあまり焦点が当たっていない点が気になる。
  • 残業が生じるメカニズムを、単に個人の能力不足に落とし込むのではなく、
     ・一部の(仕事ができる)社員に集中しやすい
     ・「突発的な業務が頻繁に発生する」などの業務特性があると、残業が起こりやすい
     ・自分の担当業務をこれ以上増やしたくない人にとっては、
      「適度な残業による、忙しさの演出」へのインセンティブが働く
    などの事実をデータから明らかにした点に、本書の分析の価値がある*1
  • 本書での「残業代還元」の施策の一例に、固定残業代が挙げられている。
    「残業の有無にかかわらず、月◯◯時間分の残業代を支給」というものだが、
    固定残業代の制度で働いている身としては、微塵も効果を実感できていない*2
    その点では、本書の提示する「改善策」には希望を感じられないでいる。
    「残業代還元」をいかにすれば実現できるか、中原研究室のさらなる調査に期待したい。
こんな人におすすめ
  • 残業と成長機会損失の二重苦に陥っている若手社員
  • 部下を持ち、部下を育成する気のある、全てのマネージャー・管理職
  • 「昔は◯◯だった」「若い頃は◯◯だった」が口癖で、若い世代から嫌われている人。

*1:より正確に言えば、私自身の実感と一致している「残業」の実態を示した点に、私にとっての本書の価値がある。

*2:考えられる要因としては、
 1)固定残業代込みでも一般的な会社に劣る給与レベル
 2)そもそも、固定残業の時間までフルで働いても終わらない業務量
 3)「固定残業の時間分までは働かせるのが普通」という会社風土 etc...